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バンコク騒乱について

 毎月のように仕事でバンコク入りし、周囲からは第二の故郷とさえ言われているタイでまともやデモ隊と政府軍の衝突があり、複数の死傷者が出た模様です。前回のブログでも少し書いたように、我が国マスコミはこの騒乱を「タクシン派vs現政権」と言う視点で報道しているようです。ただ、個人的にはこの方向性に大いに不満があるので、基本政治的なことやイデオロギーに関してはこのブログで述べない事にしていたのですがあえて記事にしてみました。

 確かに現在バンコクでデモを繰り広げているUDD(以下赤シャツ)の最大のバックボーンはタクシン元首相であることは間違いありません。彼が首相時代にタイ北部・東北部の比較的低所得者層にばら撒き政治を行い、その絶大なる人気を背景に一気に頂点に上り詰めたのは事実です。また、その過程でしこたま私財を膨れさせたのもこれまた事実だと思います。ただ
「タクシン氏が汚職まみれだったから彼のすべての行為が悪だったか」と言えば違うと思います。例えば、貧困者層向け政策として「30バーツ医療」と言う制度を実施しました。これは、30バーツ(日本円で100円弱)で地域医療を受ける事が出来る(もちろん、手術とかは別です)と言うものです。これにより、今まで病気にかかってもお金が無い為病院に行く事が無かった人々が救われたことは言うまでもありません。

 したがって、その様に政治家の中で初めて自分達を視野に入れた政策を展開してくれたタクシン元首相を北部・東北部の農民達がいまだに支持するのは当然の事ではないでしょうか。ただ、熱心な赤シャツ党のタイの友人数人に尋ねてみると、現在バンコクでデモを展開している赤シャツは別に国外逃亡したタクシン元首相を無罪にすべきと言ってデモしているわけではないようです。彼らの一番の主張は「自分達が選挙で選んだ政権が、軍事クーデターに近い手法で何度も現政権側に奪い取られた事」に対する抗議、ならびに「もう一度選挙によって、どちらが正しいのか白黒つけるべき」と言うことに尽きます。しつこいようですが、現在のタイのアビシット政権は選挙を経て国民に選ばれた政権ではないと言う事を日本国民も知っておく必要があります。

 ただ、日本企業にとっては現政権の方がタイでビジネスを展開するのに都合が良い、と言うよりは彼らの得意先のタイ人と言うのが皆、現政権の恩恵をこうむっている都市部の富裕者層である為、「赤シャツ=タクシン=悪」のような図式を描きたがっているのです。その様な人々は一様に「タクシンがタイをだめにした、だから赤シャツも悪である」と言います。しかし、彼らは一度でもバンコク以外の地方に足を運び、そこを通過するだけでなくある程度滞在した事があるのでしょうか。

 例えばこんなデーターがあります。「タイ国家経済社会開発庁によれば2006年の1人当たりの平均年間所得はタイ東北部が約3万5000バーツ、都市部(バンコク周辺)は約30万バーツである」。タイ東北部は主に農業が主産業ですが、1年のうち数ヶ月の雨季の時期にしか農業が出来ません。大きな川も無く農業用水が手に入らないのです。そんな彼らは、1年のうちかなりの月日をバンコクなどの都会に出稼ぎに出ています。しかし、教育水準も低く特技を持っていない彼らは、普通のサラリーマンなどの職に尽く事は望むべくも無く、日雇い労働など信じられないほどの低賃金で働かざるをえません。農村部の若者は、地域に留まっても仕事が無く都市部でもまともな仕事に就けないため、犯罪に手を染めたり女性であれば風俗界に入るのもざらです。

 東北部の平均年収を1日あたりに換算すると約100バーツ、日本円で280円位でしょうか。彼らが汗水たらして日々稼げる金額はその程度なのです。しかし、タイに旅行した方ならばある程度お判りでしょうが、100バーツなんて日本人旅行者にとってはレストランのチップ程度に過ぎません。バンコクっ子にとっても、マックでハンバーガー一つ購入する額程度なのです。その金を必死になって稼いでいるタイ東北部の人たちの怒りが今回のデモの根底にあるのだと思っています。

 「現政権は良い政治を行っているのに赤シャツは迷惑」と言い切れる日本人を見ていると本当に怒りがこみ上げてきます。もし、タイ人にとって良い政治を行っているのであれば、なぜ過去3回の総選挙ですべてタクシン派が勝利してしまったのでしょう?「大多数のタイ人にとって良い政治と、一部の富裕者層に都合の良い政治」は違います。若い頃から魚の採集で、タイの田舎を訪問している私にしてみれば「一度でいいから、あんたらもそこに行って、子供達がどんな生活を強いられているのか、そして彼らの未来には何が待っているのか、その目で確かめてこいっ!」って言いたいです。学校なんて行きたくても、お金を稼がなくてはならないから親の手伝いをせざるを得ない子供達は、大人になっても都市部で高給を得られる仕事には絶対につけないという現実を知っていただきたいのです。「微笑みの国」と言われるタイですが、深層部には純然たる階級差別が横たわっているのです。そして現在の構造では底辺の人間は絶対に這い上がれません。

 仕事でもしくは観光でバンコク周辺部だけを見てまわり、タイ人の中では富裕者層とだけしか接していないのに、現在の赤シャツの行為を簡単に批判するのは大きな間違いです。もっとも、赤シャツの今の行動が良いとは私も少しも思いませんし、こんなやり方で解決できるとも思いません。ただ、彼らは彼らなりに「タイ人の民主主義や自分の子供世代の本当の幸せ」を掴み取る為に戦っていると言う事は、我々も心のどこかにとどめておかなくてはならない事だと思います。
今まで「貧乏人は黙ってろ」的な政策を展開してきた旧権力者層に対する庶民の抵抗なのです。長々と、柄にも無く熱くなっちゃいましたけど(苦笑)、とにかく少しでも早くそして平和的にこの騒乱が収束に向かう事を心から願っています。
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